2016年08月12日
お勧め書籍『がんとともに、自分らしく生きる~希望をもって、がんと向き合う「HBM」のすすめ~』
みなさま
暑い日が続きますね。
唐突ですが、お勧め書籍の紹介、第2回目です。
今回は、『がんとともに、自分らしく生きる~希望をもって、がんと向き合う「HBM」のすすめ~』を紹介させて頂きます。
6月25日に松本市で行われた『第8回長野臨床腫瘍懇話会』の特別講演で、この書籍の著者である高野利実先生のお話を聴き、とても共感し、是非読んでみたいと強く思いました。
※『第8回長野臨床腫瘍懇話会』については、以下をクリックしてください。
HP委員ブログ「第8回長野臨床腫瘍懇話会に参加して」
もし、がんになったら・・・、皆さんどんなことを考えますか?
「人生、もうおしまい」
「希望がない」
「人生の敗北」
「人生の負け組」
人それぞれでしょうが、やはり落ち込んで当たり前だと思います。
でも、この先、ずっとそんなことを考えて「生きていく」で良いのでしょうか?
高野先生は、御自身の経験などから、こういった苦悩を抱えた患者さんへ、がんとどう向き合っていくことが今後の人生で大切かをこの書籍で述べています。これは、同時に私たち医療従事者へのメッセージとも取れると思います。
パッチ・アダムス氏の言葉を引用し、「健康とは病気であるかどうかは関係なく、病気であってもその人が幸せであれば健康と言え、病気であっても誰もが幸せになることが出来る。たとえ病気が治せなくても人を幸せにするために医療は存在する。真の医療とは人を幸せにすることで真の健康をもたらす」と述べています。(P.85~86から一部引用)
ここから、高野先生は「HBM」という言葉作ったそうです。
「人間に基づく医療=Human Based Medicine」⇒「人間」に基づいて「一人ひとりの、その人なりの幸せ」をめざす医療
自分はどうなんだろうと考えてみたら、つい日常の業務を流れ作業のようにこなしていく毎日になりがちだったと思います。患者さん一人ひとりに向き合うことがとても大切だと感じました。
また、高野先生は、この書籍の中でマスメディアやインターネットなど氾濫する情報の波に翻弄されないようにするにはどうしたら良いのかを述べ、リスクとベネフィット=エビデンスについても解りやすく解説されています。
皆さんは、患者さんや家族から情報を求められたときに、エビデンスについてどうお話していますか?
私は、データとか統計なんて言葉で片づけてしまっていましたが、高野先生の解りやすい解説は患者さんや家族にどうお話したら良いかとても参考になりました。
書籍の中で直接は述べられていませんが、高野先生からもう一つのメッセージが隠されていると私は感じます。(私の勝手な解釈ですが~(^-^; )
それは、「常に目的意識をもって取り組む」ということだと思います。手段と目的(あるいは目標)を混同しないことは、とても大切なことではないでしょうか。
抗がん剤治療を行うことが目的なのか?緩和ケアをすることが目的なのか?
高野先生は、抗がん剤や鎮痛薬を使うとか使わないとかに関係なく、その患者さんがその人らしく生き抜くことを目的として、患者さんと接するようにしているそうです。
これは、医療に限らず、すべてのことに言えることだと思います。つい、目的を達成するための手段にこだわり、結局なにが目的であったのかを忘れてしまうことってありませんか?
振り返ってみると私自信は、けっこうあるんじゃないかなぁ~って思いました。
「目的意識を持つ」ことは、とても大切だと感じています。
第8回長野臨床腫瘍懇話会の特別講演と同様に、とても共感できることばかりでした。がんの患者さんと向き合っていこうと取り組んでいる方、がんの患者さんとどう接していったら良いか悩んでいる方にぜひ読んで頂けたらと思います。
木曽病院 松原