2017年10月17日
第13回長野県がん医療を考える薬剤師の会年会 開催報告
第13回長野県がん医療を考える薬剤師の会年会 開催報告
伊那中央病院 薬剤科 六波羅 孝
平成29年11月7日伊那中央病院にて、第13回長野県がん医療を考える会年会を開催しました。長野県がん医療を考える薬剤師の会は、「県内のがん・緩和医療に関わる病院薬剤師の連携と交流を図るとともに、最新情報の共有や、がん医療に関わる中で日々疑問に感じている諸問題に対して忌憚のない意見交換を行い、各施設での解決の糸口となる環境をつくること」を目的に活動を行っております。 近年、経口抗がん剤の増加や化学療法が外来通院にシフトが進んでおり、保険薬局の先生方を交えた情報交換により相互に顔の見える関係を構築するとともに、多様化する抗がん剤治療に対し、知識の習得・患者との良好なコミュニケーションを図ることが重要となります。
今年度は、一般演題3題および日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之先生を招聘し、「がん患者とのコミュニケーションスキルの重要性」についてご講演いただきました。
*一般演題1「当薬局におけるがん患者さんへの対応と課題」上伊那薬剤師会会営いな薬局 藤森正博先生より発表いただきました。検査値・病名等もわからない状況の中、患者との問診により得られた情報をもとにTS1やゼローダ錠の内服カレンダー作成、手足症候群の予防としての保湿剤塗布のパンフレット作成などの実例を提示いただきました。また、最近は高額な内服剤も多く、在庫の問題、窓口での患者負担額のトラブル事例などを提示いただき、病院からの情報提供・情報共有の必要性を感じました。病院薬剤師と保険薬局の薬剤師がもっと近い、顔の見える関係を構築し、安全で安心な薬物療法の提供に努めていく必要性を感じました。
*一般演題2「コミュニケーション勉強会アンケート結果と薬局での事例」松本薬剤師会会営村井薬局 吉澤貴代美先生より発表いただきました。吉澤先生は中信がん薬薬連携推進ワーキンググループとして積極的に薬剤師間の交流を行い、継続した勉強会の中で行ったアンケート調査をご報告いただきました。コミュニケーションスキルに自信を持っている薬剤師は少なく、多くの薬剤師が持っている患者支援の悩みを共有し、膝を交えた勉強会の開催により、同じお薬でも患者さんの心情に察した説明を行っていきたいとのコメントは非常に強く心に響きました。
*一般演題3「地域に根差したコミュニケーション」県立木曽病院 松原重征先生より発表いただきまいた。松原先生のこれまでの患者支援の経験を振り返りながら、年代により薬剤指導における「話す」から「聴く」にウエイトの変化について、ユーモアを交えながらお話しいただきました。特に在宅薬剤管理指導において、松原先生が訪問する時間に合わせて患者さんがパジャマから着替えてベッドに座って待っていてくれた事例など、患者さんとの強い信頼関係を結ばれていた様子を拝聴することができました。いろいろな話題を引き出しに持ち、患者さんのストライクゾーンに合わせてコミュニケーションというキャッチボールを行っていくという松原先生のスキルを学ぶことができました。
*特別講演「がん患者とのコミュニケーションスキルの重要性」日本医科大学武蔵小杉病院 勝俣範之 先生よりご講演いただきました。
勝俣先生には患者とのコミュニケーションにおいて最も重要なことは、患者との信頼関係であり、良好な信頼関係を構築することが良好な医療提供につながると強調していただきました。がん医療に対してEBM(Evidence-based Medicine)が提唱されて久しいのですが、それまでの医療が医療者の経験と知識に基づく古い体質であったものから脱却すべく、エビデンスを重視した医療にすべきと提唱されたものでした。一方で、EBMを重視し過ぎた医療は目の前の患者を無視した、マニュアル医療をもたらし、患者への個別化を無視する危険性を含んでいます。一方で、英国のグリーンハル医師により提唱されたのが、NBM(Narrative- based Medicine)であり、「物語に基づく医療」「対話に基づく医療」などと略され、患者を一人の人間として尊重して対応し、その患者の物語を患者と医療者で共有していこうとするのがNBMの基本的な考え方です。がん医療において、EBMだけでなく、NBMを両輪として導入していくことが重要です。
“目の前の患者さんから逃げない”絶えず向き合い「いちばんよい方法は何か?」ということを患者さんと一緒に、必死になって探していくという姿勢が大切であると教えていただきました。
薬剤師としての視点を大切にしながら、日々の患者さんとの出会いを大切にし、共に学んでいきたいと感じました。
参加された28名の保険薬局薬剤師、病院薬剤師の先生方より活発な質疑応答も行われ、有意義な年会となりました。参加されました先生方、ありがとうございました。また、共催いただきました持田製薬株式会社、持田製薬販売株式会社に深謝申し上げます。
本会では長野県内のがん医療に携わる薬剤師の情報交換を目的として、メーリングリスト「長野県がん医療を考える薬剤師の会ML」を立ち上げております。「がん医療」と聞くと尻込みしてしまう方も多いのでは・・・。でも、安心してください!ルーキー、ベテラン、病院勤務、保険薬局勤務、長野県のがん医療に貢献したいという💛ハートを持っていれば、どなたでもwelcome!!長野県内の薬剤師の情報交換の場として、盛り上げていく意向ですので、是非メンバー登録をお願いします。詳細は長野県薬剤師会HP、長野県病院薬剤師会HPなどをご確認ください。