活動報告

活動報告

2016年12月07日
第31回長野県病院薬剤師会薬剤師専門講座 ~薬物動態に基づいて腎薬物療法を考えてみよう~ が開催されました。

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92名の先生方が参加されました。

 平成28年度2回目の専門講座は、11月27日(日)に92名の受講生を集め、信州大学旭総合研究棟9階講義室にて開催されました。
 今回は「薬物動態に基づいて腎薬物療法を考えてみよう」をテーマに、東京大学医学部付属病院薬剤部の大野能之先生、佐久総合病院佐久医療センター薬剤部の市川裕平先生、新潟県立がんセンター新潟病院薬剤部の吉野真樹先生をお招きしました。薬物動態の知識をベースに、添付文書を読み取る力や、症例を通して実臨床に活かせる力をみにつけ、安全で適切な腎薬物療法を支える薬剤師を目指すことを目標に企画したもので、腎薬物療法としては初めての講座でした。

1.薬物動態を復習しよう
 大野先生からまずクリアランスの概念など薬物動態の基礎的知識を学びました。非常にわかりやすい内容で、今までクリアランスや分布容積というものがよくつかめていなかった受講生も、イメージが持てたのではないかと思います。クリアランス理論によって腎機能低下時の投与設計やGiusti-Hayton法に加え相互作用を注意喚起するPISCSまでもが説明ができることを知り、クリアランスを理解する重要性を知った講義となりました。

2.添付文書を読み取る力を養おう
 こちらも大野先生から、まず添付文書を見るにあたり注意すべき点の説明がありました。書いてある言葉やMRさんの売り込み文句を鵜呑みにしてはいけないことや、理論ばかりになってはだめだが、理論から導く値が実測値とだいたい一致しており、データのない部分での予測に役立つことを学びました。
最後に実際の添付文書やIFをみながらのグループディスカッションを行うことで、添付文書から薬物の特性の読み取り方を学びました。

3.腎不全患者さんによく使われる薬の豆知識を手に入れよう
 県内でただ一人という腎臓病薬物療法認定薬剤師である市川先生より、なるほどと思える豆知識を、わかりやすくご講演頂きました。クイズ形式で問題を出題→解説→解答という流れになっており、最後まで興味をもって聞くことができました。腎不全患者さんによく使われる、馴染みの多い薬がほとんどでしたが、知らないことが多く「へぇ~」と思える内容が多く盛り込まれていました。


4.症例を通して考えてみよう
 大野先生から午前中に講義頂いた理論をふまえ、課題症例に対して添付文書やIFを活用して、グループディスカッションを行いました。予習されている受講生も多い印象で、グループ討論は意義あるものになったように思います。解説では、大野先生が普段添付文書をどのように読み解いているのかという過程を見ることができとても参考になりました。最後に、腎機能や相互作用の面からの検討の前に、各疾患に関するエビデンスがあるということも忘れてはいけないこと、ディスカッションする大切さを教わりました。

5.PISCSを活用したCYPに関する臨床的応用
 最後のコマでご登壇頂いた吉野先生は、以前に新潟で大野先生をお招きしてPISCSを学んだことがあり、それを臨床の場で活用したという事例を紹介下さいました。講義を受けただけにとどめず、応用している点は、まさに専門講座でも目指しているものであり、大変参考になったと思います。相互作用の取り組みを通して、医師の意識が変わり、オーダー時に薬剤部へ問い合わせが来るようになったという成果もあったとのことです。
また、ADMEといった薬剤師として力を発揮できる分野を鍛錬し、チーム医療において主役になるのではなく、薬剤師らしいアプローチや関わりということを意識しているという言葉がとても印象に残りました。コミックの名言がちりばめられていて、同世代の受講生は非常に共感えられたことと思います。

 満足できたというお声も頂き、今年度2回目の専門講座も無事終わりました。受講された先生方が、臨床の場で薬剤師らしい活躍ができることを楽しみにしております。
次回は来年2月5日、感染症分野の専門講座「ガイドライン、最新の論文といったエビデンスを感染症診療の現場にどう活かすか」を企画しておりますので、皆さんご参加よろしくお願いします。

                                   (健和会病院 佐藤勝治)

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