2016年09月21日
第30回長野県病院薬剤師会薬剤師専門講座 がん化学療法 ~分子標的薬を理解しよう~
第30回長野県病院薬剤師会薬剤師専門講座
がん化学療法 ~分子標的薬を理解しよう~
平成28年度の初回となる専門講座は、90名にご参加いただき、9月4日(日)信州大学 旭総合研究棟 9階講義室で行われました。今回は、昨今急激に増えている分子標的薬をテーマとしました。作用機序も複雑であることから、久しぶりに座学中心の講座としました。講師としては、北陸大学 石川和宏先生、佐久総合病院 佐久医療センター 長瀬通隆先生、相澤病院 中村将人先生をお招きしました。また、薬剤師の関わりとして、諏訪赤十字病院 小岩井 幸恵先生、長野赤十字病院 若林 雅人先生にご登壇いただきました。
今年は県病薬の委員会編成の年でもあり、リフレッシュメンバーの第一回目の講座でもありました。準備段階で色々と手はずを整えたのですが、この日は防災訓練の日と重なり、「ただ今、立っていられないほどの地震が発生しました」と、受付時間から全館アナウンスが鳴り響きました。このアナウンスは全館放送ゆえ、受講いただいた皆さんや、講師の先生方には大変ご迷惑をおかけしました。こんなまさかのスタートとなりました。
まず一コマ目。「基本まるわかり分子標的薬」として石川先生にご講義いただきました。石川先生は日病薬のがん薬物療法認定薬剤師の問題作成にも携わっておられる先生ですが、大変気さくで分かりやすいお話しをして下さいました。石川先生は今回のテーマと同じ本『基本まるわかり分子標的薬』を執筆されており、第3版が10月に発売されるそうです。ちなみに、11月には『薬が見えるVol.3』が販売されるようで、その中で分子標的薬について担当されているとのことでした。宜しかったら、皆さん手に取ってみて下さい。
続いて二コマ目。Driver mutationの講義に長瀬先生にご説明いただきました。長瀬先生は以前にも専門講座をご担当いただいております。その時は第一回目の症例検討会でした。長瀬先生の巧みな話術で、分子標的薬の薬物療法についてエビデンスを交えて臨床の実際をお話頂きました。長瀬先生には四コマ目の免疫チェックポイント阻害剤についてもご担当いただきました。この時に配布物の手違いがあり、またまた皆さんにご迷惑をおかけしてしまいました。
そして三コマ目。中村先生にはall comer, negative selectionについてご講演いただきました。なかなか聞き慣れない言葉ですが、ゆっくりと分かりやすくお話しいただきました。スライドの中で“Evidence Based Medicine(EBM)”ならぬ“Evidence Controlled Medicine(ECM)”に気をつけなければならない、と言うお言葉が印象的でした。エビデンスに操られないようにしないといけないですね。
最後に「薬剤師の関わり」として、小岩井先生、若林先生にお話しいただきました。小岩井先生は、今年行われた第8回日本がん薬剤学会(JSOPP)学術大会で「がん専門薬剤師になるための50症例書き方」で軟部肉腫についてご登壇なされています。また、若林先生はがん専門薬剤師の問題作成委員を担当されていらっしゃるだけでなく、がん専門薬剤師の優秀症例賞を授与されました。お二人の先生は、患者さんにどのように薬学的知識を活用して関わっていくか症例を通して具体的にご講義下さいました。
トラブルがありましたが、皆さんのご協力のお陰で本年度初回の専門講座が無事終わりました。ありがとうございました。今度は11月27日(日)に「薬物動態に基づいて腎薬物療法を考えてみよう」を企画しておりますので、皆さんそちらの方もご参加宜しくお願いします(申し込みはweb申し込みでお願いしますね)。
相澤病院 三浦篤史