2016年07月17日
お勧め書籍 『死ぬことと見つけたり』
みなさま
普段、本を読みますか~?
私は・・・、実は、それほど読んでいません~(汗)
でも、気に入った作家さんの作品は、とことん読んだりします。
その一人が、隆慶一郎氏です。
今回、紹介するのは『死ぬことと見つけたり』です。
昭和十八年、隆氏は、フランス文学を学びたくて、東京帝都大学文学部仏蘭西文学科に入学したそうです。
心酔していたのは、フランスの詩人アルチュール・ランボウ!
しかし、当時の日本は戦時中。隆氏も中国大陸に派遣となったそうです。当時、外国文学は厳しく規制されていたそうですが、隆氏はどうしてもアルチュール・ランボウの作品を手放すことが出来ず『葉隠れ』の中身を切り抜き、差し替え、身に着けて行ったそうです。
そんな隆氏の体験談から始まるのが『死ぬことと見つけたり』です。
舞台は、江戸時代初期の佐賀鍋島藩。戦乱から泰平へと時代が変わっていくなか、頑なで融通が効かず、不器用だが実直な男たちの物語です。
主人公の杢之助は『葉隠れ』の教えに従い、毎朝、床を出る前に入念に「死んでおく」ことを繰り返している「死人」。それで、心がすとんと落ち着き、何事にも動じることがない。時には鉄砲名人と戦のさなか決闘を行い、時には野生の大猪や老獪な大熊と対峙し、たとえそれが殿様相手にも自分を曲げない。一瞬にして命のやり取りになる場面でも躊躇は全くない。恋もするが一途な忍ぶ恋。そんな彼の生きざまは、読み手に痛快さを感じさせます。まさに、ハードボイルドという表現がぴったりだと思います。「時代小説」というより「時代活劇」!?
惜しまれるのは、作者の隆慶一郎氏がこの作品の完成前に他界してしまったことです。
でも、その後の杢之助の活躍をあれこれ想像しワクワクします。
木曽病院 松原